ここではモトグッツィを快調に、そして末永く楽しむためのワンポイントアドバイスから耳寄りな情報まで、グッツィ・スポルト・ジングウシが長年蓄積したノウハウや、世界中のネットワークから得た最新情報などをご紹介します。 その第一回目は、「エンジンオイル」の話をしたいと思います。 そもそもエンジンオイルは、エンジン内でめまぐるしく動く各パーツの摩擦抵抗をやわらげたり、そこで発生した摩擦熱やシリンダー内の爆発熱を吸収したり、エンジン内に発生する様々な負荷をやわらげる働きをしたりと、実に過酷な労働を強いられているのです。ですから、エンジンの持つ性能を100%発揮させるためには、気温や湿度、また使用条件を考慮したオイル選びが必要となるわけです。また、モトグッツィは冷却方式が空冷であったり、オイルを回すためのオイルポンプのキャパシティが排気量に対して決して十分とは言えません。ですから、エンジンオイルの性質によってエンジンの性能はもとより耐久性が大きく左右されるのです。 では、モトグッツィにはどんなエンジンオイルが適しているのでしょうか。ポイントは二つあります。 まず一つ目はオイルの成分を吟味することです。一般に売られている4ストローク用のエンジンオイルは、大きく三つに分けることができます。天然の石油をベースにした“鉱物オイル”と化学分子の結合によって作られた“100%化学合成オイル”、そしてその二つの成分をミックスした“半合成オイル”です。それぞれに特徴があるのですが、モトグッツィには“100%化学合成オイル”を是非使って欲しいのです。なぜならルマンIII以降、モトグッツィは化学合成オイルの使用を条件にしたエンジン造りを行っていているからなのです。そのエンジンに鉱物オイルを使うことはエンジンをいじめることになり、寿命も縮めてしまいます。また、鉱物系のオイルに対してオイル自体のポテンシャルが高いので厳しい条件下でもエンジンをガードし、100%の性能を発揮させるためのサポートをしっかりと行ってくれるからです。 ルマンII以前のマシンにも、これは同様です。オーバークオリティーになりますが、エンジンにとっては優しいことなのです。ただ、鉱物性オイルに比べ化学合成オイルは浸透性が高いので多少オイルにじみは多くなりますが、寿命を縮めてしまうよりかはずっとマシです。 そしてもう一つのポイントは、オイルの固さを吟味することです。エンジンオイルは、エンジン内のパーツにまとわりつき油膜を作ることで、様々な過酷な仕事をします。そして、その油膜の厚さによってオイルが分類されています。これをオイルの固さと言います。オイル缶に表示されている“10W40”とか“20W50”という数字は、オイルの固さを表しているのです。 “W”は“ウインター(WINTER)”の略で、この“W”より前の数字が小さいほど油膜が薄く、柔らかいオイルということになります。柔らかいオイルは抵抗が少ないので燃費が良く、エンジンも軽く回りますが、高回転で高負荷が掛かったときに油膜切れをおこし(完全に切れてしまうことは無いのですが…)、トラブルの原因につながってしまいます。反対に、“W”以降の数字が大きいほど油膜が厚く、固いオイルということになります。固いオイルは高回転・高負荷時にも油膜をしっかりと維持します。しかし、抵抗が大きく始動性や燃費の低下や、エンジンの回転が多少重くなると言った症状が見られます。
でも、その種類はあまりにも多く、その中でグッツィに適しているオイルは……、などと随分悩んでしまいます。しかし、空冷OHVのビッグツインエンジンと言うことを考えれば、その答えは意外に簡単です。夏用と冬用に固さの違う二種類のオイルを用意する、と言うのがその答えです。 空冷エンジンは、エンジンの発熱に外気温が大きく影響を与えます。外気温が20度以上も違う夏と冬では、必要とするオイルの固さが違うのです。 夏は外気温も高くエンジンの発熱も多くなります。ですから、高温時にもしっかりと油膜を維持してくれる固いオイルが必要となります。15W50、20W50、10W60というオイルがオススメです。あまり柔らかいオイルを使うと、熱によってオイルの劣化を早めエンジントラブルの原因になるほか、ガスケットやシール類の劣化・硬化を早める原因にもなってしまいますので注意してください。 冬用オイルは、外気温によってエンジンの発熱がある程度抑えられるので、さほど高温時の固さを気にする必要は無いでしょう。それよりも始動性や低温時の流動性を考え“W”以前の数字が小さいオイルが良いでしょう。とは言っても、空冷エンジンは水冷エンジンのようにエンジン熱を察知し、コントロールすることはできないので、高温時の設定もおろそかにしてはいけません。10W40、10W50、5W50というオイルがオススメです。 最後にオイルの交換時期ですが、GSJでは2000kmでの交換をオススメしています。日頃の足として使われているお客さんも多く、ストップ&ゴーの多い日本の交通事情を考えると、2000kmも走るとオイルはしっかりと汚れてしまっています。ツーリングをメインにしているお客さんの場合は、さほど汚れはひどくないのですが、エンジンにとっては綺麗なオイルが害になることはありません。安心を買うつもりで交換してもらっています。 また、夏用への交換は4〜5月、冬用には10〜11月をオススメします。これは、先に述べた距離数に多少足りなくても、エンジンの発熱量を考えて交換してあげてください。走行距離数と一緒にオイルを入れた期間も管理してあげる、というのがエンジンにとっては非常に優しいことだと思います。いつ買ったか分からないとか、いつ開封したか分からないオイルを使ったり、何カ月も放ったらかしにしていたままのエンジンをいきなりブン回す、なんていう行為はやめてくださいね。
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